2009-01-01から1年間の記事一覧

「倉俣史朗 To be free」藤塚光政展

過日、西麻布のギャラリー「夢のカタチ」で行なわれている写真家・藤塚光政さんの個展を観てきた。清潔感のある小さな白い空間の壁に、倉俣史朗作品を撮影した写真が1点ずつガラスの板にはさまれ、立てかけられていた。ふっと目を向けては目を離せなくなる写…

こつこつと日々を営む

先日、神保町の「さぼうる」に行った。創業54年を数える老舗だ。植物の生い茂る外壁、入口には年月を重ね鈍く光るトーテムポールと赤電話。店内はランプの光でほんのりと照らされている。コーヒーにはピーナッツ。一緒に行った方に「チーズドッグがおいしい…

あなたにとって、「生きる」とは?

前回のエントリーで書いたように、『デザインのひきだし』7号にて装丁家の菊地信義さんの記事を執筆しました。せっかくなので、4年前にNHK「ようこそ先輩」という番組で菊地信義さんの回を拝見し、深く感銘を受けたときの文章を復活させてみます。* * * …

『デザインのひきだし 7』で紙工職人・坂本政弥さん、装丁家・菊地信義さんにインタビュー。

“プロなら知っておきたいデザイン・印刷・紙・加工の実践情報誌”『デザインのひきだし』7号が発売されました。今回で第3回目になる連載「名工の肖像」*1では、紙工職人の坂本政弥さんにご登場いただきました。坂本さんは、墨田区で創業85年の紙工所を営み、…

自分の壁

壁は自分自身だ。岡本太郎『壁を破る言葉』イーストプレス,2005.4 「自分の壁」ということをよく考える。くだらないちっぽけな自分自身の思い込みが、案外さまざまな行動に踏み出すことを阻む壁になっていたりする。そしてそれは他人から見れば、なぜそんな…

道を切り開きたいのであれば、ぶつかるところまで行くほかない

夏目漱石『私の個人主義』を読んだ。この本には漱石の講演がいくつか所収されているが、表題の「私の個人主義」を読んで唸る。記録を見れば大正3(1914)年11月の講演だから、実に90年以上前に話された内容だというのに、いまなおこれだけ示唆に富んでいると…

働くことが希望になる

『この世でいちばん大事な「カネ」の話』にこんな文章があった。 生きていくなら、お金を稼ぎましょう。 どんなときでも、毎日、毎日、「自分のお店」を開けましょう。 それはもう、わたしにとっては神さまを信じるのと同じ。 毎日、毎日、働くことがわたし…

むしろ「空洞」が文章を決定づける

小川洋子のエッセイに、「輪郭と空洞」というものがあった。電車のなかで出会った少女の白いブラウスに見とれているうち、自分が見とれているのは糸によって形づくられたレース模様の輪郭なのか、レースの向こう側に透けている彼女の肌なのかわからなくなっ…

「良い伝え手」に必要なこと

内田麻理香さんのブログを拝見したら、自分の名前が出ていて驚きました。 3年前のmixiに書いた言葉を掘り起こしてみます。今見ても、彼女の発言はまったく古さを感じないし、色あせていない。雪朱里 さんにお会いした時、彼女から出た言葉。「ある分野の挫折…

「チェコのキュビズム建築とデザイン 1911-1925」展

先日銀座に行った際、INAXギャラリーにも寄って、「チェコのキュビズム建築とデザイン 1911-1925」展を観てきた。 ピカソ、ブラックが中心となって起こった20世紀初めの美術運動キュビズム。チェコでは世界で唯一、建築に応用され、プラハを中心とした各地に…

矢萩喜從郎展「Magnetic Vision/新作100点」

ギンザ・グラフィック・ギャラリーで開催中の矢萩喜從郎展「Magnetic Vision/新作100点」を観た。 1988年の「Shot by a Sight」から続く矢萩喜從郎氏の視覚世界への探求。「Perceiving by Sight」(1992)、「One’s Point of View」(1994)、「Hidden Accumula…

画家という人々

今日読み終えた『知をみがく言葉 レオナルド・ダ・ヴィンチ』というダ・ヴィンチの語録に、こんな言葉があった。 絵画----やがては滅んでしまう 存在の移ろいやすい美しさをとどめておくことが できる素晴らしい科学。 美に、自然の作品を超える永続性を与え…

《 死の床のカミーユ 》1879年 クロード・モネ "Camille Monet on Her Deathbed" 90×68cm | 油彩・画布 | オルセー美術館(パリ)*11879年9月5日、画家クロード・モネは最初の妻カミーユを32歳という若さで失った。深い悲しみの淵で、その妻の亡がらの色彩が…

子どもの頃の自分の傷つきを本当にわかっているのは自分しかいない

〜2008年6月21日の日記より〜 『ダ・ヴィンチ』2008年7月号は「梨木香歩」大特集*1。梨木さんのロングインタビューが載っている。今日から映画が公開される『西の魔女が死んだ』について語るなかに、表題の言葉があった。「つまりね、小さかった頃の自分の傷…

昭和のくらし博物館 開館10周年〜映画「家事の記録」上映会のお知らせ

大田区の昭和のくらし博物館が今年、開館10周年を迎えます。これを記念して、映画「家事の記録」上映会が行なわれることになりました。予約は4月18日(土)までだそうです。以下に詳細を掲載しますので、興味をおもちの方はぜひご参加ください。*記録映画「…

文字は語る「原田幹久さんに聞く 書とフォント」【追記あり】

月刊DTPWORLDで連載していた「文字は語る」最後の1本が公開されました。最後は紙媒体ではなく、月刊DTPWORLDの版元であるワークスコーポレーションが運営しているCGデザイナー・Webデザイナー・グラフィックデザイナーのためのクリエイティブ・タブロイド wi…

佐藤修悦『ガムテープで文字を書こう』

駅の工事現場から生まれた文字 佐藤修悦さんが本を出されたと知り、早速手に入れた。本のタイトルは、『ガムテープで文字を書こう』。「修悦体」で組まれたタイトル文字を表紙に見て、思わず顔がほころぶ。ガムテープで文字を書こう! ―話題の新書体「修悦体…

文字は語る「杉本幸治さんに聞く 本明朝」

取材・執筆を担当している月刊DTPWORLDの連載企画「文字は語る」の2009年5月号*1で、書体デザイナーの杉本幸治さんに「本明朝」についてうかがいました。 リョービイマジクスの基幹書体「本明朝」は、筆書きの感覚を残した優雅な柔らかさと、力強さとをあわ…

西原理恵子『この世でいちばん大事な「カネ」の話』

お金の話をすることは、はしたないと言われる。確かに「お金がすべて」ではない。けれども、だれしも生きていかなければならない。生きるとは、生活すること。そして生活するにはお金が必要だ。だから、お金について考えるのは、とても大事なことなのだ。西…

ていねいに、生きる。

きのう「余裕のないということは、心や生活を荒ませます。」などと書いたけれど、「忙しいから余裕がない」とは言いたくないのです。なんだかわがままですね。「忙しい」は「心を亡くす」と書く。 でも、忙しいぐらいに任せていただける仕事があるということ…

たからもの

すっかり更新できない日々が続いています。 いや、更新できないのではない。その時間すら取れないというわけではない。ただ、書けないのです。余裕のないということは、心や生活を荒ませます。よくない兆候です。* * * *幸田文の『雀の手帖』というエッ…

文字は語る「廣村正彰さんに聞く サインデザインと文字」

取材・執筆を担当している月刊DTPWORLDの連載企画「文字は語る」の2009年4月号*1で、廣村正彰さんに「サインデザインと文字」についてうかがいました。 2次元のサインが3次元の空間でどういった視覚効果をもたらすかに注目し、サインデザインに新風を吹込ん…

積み木のようにひとつひとつ。

昨日3月8日(日)は某企画展勉強会の中間報告会。テーマに詳しい方々が参加してくださり、いつもと違う視点からの指摘やアドバイスをたくさんいただいて、とてもためになる会だった。ふだんわたしが雑誌などで書いている文章は創作ではなく、取材してきた事…

永遠のアマチュア

もうひとつ、五十嵐威暢氏の本から。 僕が尊敬するデザイナーの名前を挙げてみよう。ハーバート・バイヤー、マックス・ビル、マッシモ・ヴィネリ、エンゾ・マリ、イサム・ノグチ。この他にもいるけれどこのくらいにして、彫刻家のイサム・ノグチが入っている…

「デザインすることは生きることと同じだと思う」

五十嵐威暢氏の本を読んでいたら、こんな言葉があった。 ちょっとキザな言い方かもしれないが、デザインすることは生きることと同じだと思う。人はどうやって自分らしく生きるかについて悩んでいる。デザイナーとしてなら、自分らしく何を表現するのかという…

「家具講座」のお知らせ

昨年発足した家具道具室内史学会*1が、家具の連続講座を開くそうです。学会に所属していなくても参加できますので、よかったらぜひ。家具史の第一人者・小泉和子先生から和家具や日本における洋家具の歴史、しつらい方などさまざまな知識を直接学ぶことがで…

湯本香樹実の本

はずかしながら読書量があまり多くないわたしだが、好きな作家は何人かいる。そのうちのひとりが湯本香樹実さん。ゆえあって前に別の場所に書いた感想を引っ張りだしてみる。そういえば、酒井駒子さんとの絵本『くまとやまねこ』をまだ読んでいない。湯本香…

秋田道夫写真展「空気のてざわり」

天童木工PLY*1で開催されていた、プロダクトデザイナー・秋田道夫さんの写真展「空気のてざわり」を2月22日(日)に観てきた。最終日だった。 わたしの写真は多くの場合、人やモノがその画面の中央を占める事がありません。 美とは単独のものではなくてその…

「Helvetica forever: Story of a Typeface ヘルベチカ展」

土曜日、ギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)に「Helvetica forever: Story of a Typeface ヘルベチカ展」を観に行ってきた*1。 誕生から半世紀を経た現在でも、最も知られた欧文書体として根強い人気を保ち続けている「ヘルベチカ」。今回の企画展では…

文字は語る「大島依提亜さんに聞く 映画と文字」

取材・執筆を担当している月刊DTPWORLDの連載企画「文字は語る」の2009年3月号*1で、大島依提亜さんに「映画と文字」についてうかがってきました。 映画というそれ自体がビジュアル表現であるものを、グラフィックデザインに落とし込み、その魅力を伝えてい…