文字は語る「杉本幸治さんに聞く 本明朝」

取材・執筆を担当している月刊DTPWORLDの連載企画「文字は語る」の2009年5月号*1で、書体デザイナーの杉本幸治さんに「本明朝」についてうかがいました。

リョービイマジクスの基幹書体「本明朝」は、筆書きの感覚を残した優雅な柔らかさと、力強さとをあわせもつ明朝体だ。その原字を制作した杉本幸治さんに、文字への思いを聞いた。

   ーー月刊「DTPWORLD」2009年5月号「文字は語る」リードより

1927年生まれの杉本さんは、幼いころから文字が好きで、文字づくりにかかわりたいという夢をかなえ、文字ひとすじに生きてこられました。ご自身でもおっしゃっていたとおり、杉本さんの世代で「好きなことを仕事にできる」というのは、ごく稀なことでした。それだけに、杉本さんの文字への愛情は計り知れないほど深く、目をキラキラとさせながら、楽しそうに文字にまつわるお話を語ってくださった姿が印象的でした。

なにより響いたのは、「わたしには夢があるんです」というお言葉。82歳となってなお、杉本さんには作りたい文字がある。Illustratorを駆使しながら、いまもなお新しい書体の開発に取り組んでいる。

日本語書体の開発には、たいへんな時間がかかります。なにしろ約7000字を制作しなければならない。それを個人で開発するとなれば、数年の年月が必要となります。ひととおり作り終えても、いく度かにわたり見直しをして修整を加え、より完璧なものを目指していく。よほどの熱意がなければ、なしえない仕事です。

しかも杉本さんの夢は、現在開発に取り組んでいる書体だけではありません。80歳を超えてなお、しなやかな姿勢で新たなこと挑戦し続ける。本当に素敵です*2

今回の「文字は語る」は、その杉本さんが「本明朝」という書体をどのように開発したかについてまとめています。少しではありますが、下図や原字の写真も掲載しています。ぜひご覧いただければうれしいです。


▲杉本さんが設計した「本明朝-M」

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さて、すでにお知らせしているとおり、月刊「DTPWORLD」は本号をもって休刊、13年間の歴史に幕を閉じます。約2年弱にわたり担当してきたこの連載「文字は語る」もひとまず終了。……ですが実は、あと1本、記事があるのです。少し形を変えてですが、あと1回、この企画でみなさんとお会いできます。いつ、どのような形でかは、またあらためて。

【参考】
朗文堂 robundo type cosmique / Typography Festival 杉本幸治 本明朝を語る
リョービMHIグラフィックテクノロジー株式会社の創業について|ニュース|RYOBI |リョービ株式会社

*1:http://www.wgn.co.jp/store/dat/0131/

*2:取材直後に「かくありたい」という記事でふれた82歳の方が、杉本さんです。http://d.hatena.ne.jp/snow8/20090130/p1