《 死の床のカミーユ 》1879年 クロード・モネ "Camille Monet on Her Deathbed" 90×68cm | 油彩・画布 | オルセー美術館(パリ)*1

1879年9月5日、画家クロード・モネは最初の妻カミーユを32歳という若さで失った。深い悲しみの淵で、その妻の亡がらの色彩が刻一刻と変化していくさまに心をとらえられた画家は、気がつくと彼女の姿を必死に描いていた。

かつてあれほどいとおしんだ女性の死の床の枕元で、…私はもはや動かなくなってしまった彼女の顔に死が加え続ける色の変化を機械的に写し取っている自分に気づいた。
…私たちのもとを永久に去っていこうとする者の、最後の姿を残しておきたいというのはごく自然な気持ちだろう。
…しかし、あれほど心底から愛着を感じていた者の特徴をとらえたいという気持ちよりも先に、まず色彩の衝撃によって手が勝手に動きだしていたという具合だったのだ。

http://stephan.mods.jp/kabegami/kako/Camille.html

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モネは移ろいゆく光と色彩の変化に心を奪われ、それを描きとることにこだわった画家だ。彼のなかの画家は、最愛の妻の亡がらを前にしてもなお、色彩の変化を写し取ることから彼を解き放してはくれなかった。十数年前にもっていたモネの小さな画集でこの絵と彼の文章を読んだとき、画家という業の深さをつくづくと感じ、強く印象に残ったものだった。

時は経ち、母が病にとらわれ亡くなったことを、それにまつわる自らの心の動きを、したためずにはいられないわたしがいる。書くということもまた業の深い行為なのだと痛感している。

*1:http://www.salvastyle.com/menu_impressionism/monet_son.html

*2:画集がすぐに出てこなかったので、引用元サイトを参考にさせていただきました。