矢萩喜從郎展「Magnetic Vision/新作100点」

ギンザ・グラフィック・ギャラリーで開催中の矢萩喜從郎展「Magnetic Vision/新作100点」を観た。

1988年の「Shot by a Sight」から続く矢萩喜從郎氏の視覚世界への探求。「Perceiving by Sight」(1992)、「One’s Point of View」(1994)、「Hidden Accumulated Vision」(1998)、「Existence Appearance」(2000)へと続く同シリーズは、視覚世界の不思議な成り立ちを様々な角度から紐解こうとするものでした。
 今回100点におよぶ新作で臨む新シリーズ「Magnetic Vision」、引き寄せられる視野。ある部分を虫眼鏡を通して見るとその部分が拡大して見えますが、その逆、レンズの内側の世界が、その周囲の景色まで含んだより広い世界を凝縮した状態、つまり周囲の世界を磁力によって引き寄せたような映像になっています。

ギンザ・グラフィック・ギャラリー

網点の粗い風景のなかに置かれる白い円。そのなかには四角く切り取られた風景の外側までを含む風景が、画像をもう少し鮮明にしたようなかたちで置かれている。白い円は観る者に「視野」の存在を意識させ、眼は風景を切り取っているのだということに気づかせる。同時に、切り取られた風景の外側に、さらに広がる風景があるということを想像させる。街並を、建築を、人々を観るとき、わたしたちはまずどこに眼を向けるのか。これまで無意識にとらえていた「視覚世界」がギャラリー空間のなかで顕在化していくさまにめくるめく心地がして、空間の中心に身を置きながら、幾度も作品を見まわした。

くしくも、先述のダ・ヴィンチ語録にこんな一節があった。

目を開いて見よ! 大事なのはそれだ。
皆、経験してみれば、すぐにでもわかる。
なのに、長い間、そのことはあまり知られずにいる。
あるいは誤解されている。目がどういう
はたらきをするかは、毎日使っているのだから、
皆、当たり前のように知っているし、過去から
現在にいたるまで、無数の人が文章にしてもいる。
だが、ただ知っているのと、
実際に経験するのとではまったく違う。

(ウイリアム・レイ 編『知をみがく言葉 レオナルド・ダ・ヴィンチ青志社,2008.6.22 P.110)

確かに、まったく違う。