つぶやき

焦土の中に萌えいずる緑

ふと書棚に目をやると、ずいぶん前に読みかけになっていた寺田寅彦の『柿の種』が目にとまった。手に取り開いた頁に書かれていたのがこの文章だった。 震災の火事の焼け跡の煙がまだ消えやらぬころ、黒焦げになった樹の幹に鉛丹(えんたん)色のかびのような…

今年の目標

あたらしい年、2010年を迎えたと思ったら、あれよという間に1週間が過ぎてしまった。 なんとなく毎年どこかしらに「今年の目標」を書き記しているので、一度文章にしないと新たな年のスタートを切ったという気分になれない。そんなわけで、今年の目標。昨年…

“向こう側”への想像力

以前、ある方と話していて、「世の中にあるほとんどすべてのものがデザインされていることを考えると、デザインというのはとても身近なことなのに、学校でデザインについて学ぶ機会がほとんどないというのは不思議なことだ」という話になったことがある。身…

「あなたは素晴らしい」と伝えること

季節はすっかり秋になってしまったが、「サマーウォーズ」を観てきた。子どももわたしも楽しめる映画だった。くわしい話はさておき、観終わってからずっとつらつらと考えていることがある。主人公・健二が、ヒロイン夏希の曾祖母・栄と花札勝負をしていて、…

活字直彫師・清水金之助さん「ぶらり途中下車の旅」出演

9月5日(土)9:30〜10:30 日本テレビで放映される「ぶらり途中下車の旅」(注:リンク先、音が出ます)に、活字直彫師の清水金之助さんが登場される予定だそうです。文字好きな方、手仕事・匠の技に興味がある方、要チェックですよ。清水さんとは → http://d…

昭和のくらし博物館の展示替え

9月1日、2日の2日間で、昭和のくらし博物館 企画展の展示替えをしてきた。わたしが企画展の勉強会メンバーに加わったのは3年前だけれど、手がけた展示はこれで2つめ。前回の企画展「家で病気を治した時代」は2年間行なっていたんである。通常、企画展の展示…

やさしいねこ。

おむかえの帰り道、あちこちで猫を見かけるたびに立ち止まり、子どもと一緒にひとしきり話しかける。時折、人なつこい猫がいて、ゴロゴロと喉を鳴らしながら甘えに来てくれる。子どもは最初はおっかなびっくり、しかし慣れてくるとそれはうれしそうに、猫の…

在り続けてほしいもののために、自分ができること

突然だが、Jリーグの清水エスパルスが好きだ。よく試合を観に行くようになったのは1998年ごろ。少ししてから後援会に加入して、以来ずっと後援会員だ。そんなに急激にのめりこんでしまったのか。もちろんとても好きだから入ったのだけれど、理由はそれだけじ…

白えびづくし

一泊で富山に行ってきた。ひとつは、ある匠に取材するため。もうひとつは、かつてから訪ねたいと思っていた場所で展覧会を観るため。本当に得難い体験をした2日間で、行ってよかったと心から思う。くわしくはまた追って書くつもり。とりあえず、名産の白えび…

自分の壁

壁は自分自身だ。岡本太郎『壁を破る言葉』イーストプレス,2005.4 「自分の壁」ということをよく考える。くだらないちっぽけな自分自身の思い込みが、案外さまざまな行動に踏み出すことを阻む壁になっていたりする。そしてそれは他人から見れば、なぜそんな…

「良い伝え手」に必要なこと

内田麻理香さんのブログを拝見したら、自分の名前が出ていて驚きました。 3年前のmixiに書いた言葉を掘り起こしてみます。今見ても、彼女の発言はまったく古さを感じないし、色あせていない。雪朱里 さんにお会いした時、彼女から出た言葉。「ある分野の挫折…

画家という人々

今日読み終えた『知をみがく言葉 レオナルド・ダ・ヴィンチ』というダ・ヴィンチの語録に、こんな言葉があった。 絵画----やがては滅んでしまう 存在の移ろいやすい美しさをとどめておくことが できる素晴らしい科学。 美に、自然の作品を超える永続性を与え…

《 死の床のカミーユ 》1879年 クロード・モネ "Camille Monet on Her Deathbed" 90×68cm | 油彩・画布 | オルセー美術館(パリ)*11879年9月5日、画家クロード・モネは最初の妻カミーユを32歳という若さで失った。深い悲しみの淵で、その妻の亡がらの色彩が…

子どもの頃の自分の傷つきを本当にわかっているのは自分しかいない

〜2008年6月21日の日記より〜 『ダ・ヴィンチ』2008年7月号は「梨木香歩」大特集*1。梨木さんのロングインタビューが載っている。今日から映画が公開される『西の魔女が死んだ』について語るなかに、表題の言葉があった。「つまりね、小さかった頃の自分の傷…

ていねいに、生きる。

きのう「余裕のないということは、心や生活を荒ませます。」などと書いたけれど、「忙しいから余裕がない」とは言いたくないのです。なんだかわがままですね。「忙しい」は「心を亡くす」と書く。 でも、忙しいぐらいに任せていただける仕事があるということ…

たからもの

すっかり更新できない日々が続いています。 いや、更新できないのではない。その時間すら取れないというわけではない。ただ、書けないのです。余裕のないということは、心や生活を荒ませます。よくない兆候です。* * * *幸田文の『雀の手帖』というエッ…

積み木のようにひとつひとつ。

昨日3月8日(日)は某企画展勉強会の中間報告会。テーマに詳しい方々が参加してくださり、いつもと違う視点からの指摘やアドバイスをたくさんいただいて、とてもためになる会だった。ふだんわたしが雑誌などで書いている文章は創作ではなく、取材してきた事…

永遠のアマチュア

もうひとつ、五十嵐威暢氏の本から。 僕が尊敬するデザイナーの名前を挙げてみよう。ハーバート・バイヤー、マックス・ビル、マッシモ・ヴィネリ、エンゾ・マリ、イサム・ノグチ。この他にもいるけれどこのくらいにして、彫刻家のイサム・ノグチが入っている…

しあわせの味

ホットケーキが好きだ。子どものころから、ずっと。おいしいホットケーキの話を聞くと、食べずにはいられなくなる。人形町に「カフェテラス ワコー」という喫茶店がある。ある方から「とても美味しいナポリタンを出してくれるお店がある」というお話を聞いた…

ライター(編集者)の役得

そういえば、8日(日)に小宮山さんと鳥海さんのトークショーに行った時、『文字講座』の講師をされた白井敬尚さん、杉下城司さんが会場にいらしていたので、ごあいさつしたのだ。すると、杉下さんから「そうとう勉強したんじゃないですか」と。まさに書きな…

言葉が身体を重くする。

「忙しい」と言うのをやめよう。その言葉を発するたび、自分のものだったはずの時間は他人主導のものとなり、身体は重く、新たな場所に向かうことへの躊躇が増す。物事への反応が鈍る。「忙しい」と言うたび、逃げ場をつくることになる。できないことへの言…

かくありたい。

今週取材でお会いした方は、順に72歳、83歳、82歳。どなたも頭の回転がはやく、話がおもしろくて引きつけられっぱなし。なによりの共通点は、常に視線が未来に向いており、過去に築き上げたものを壊すことを厭わず、工夫することが大好きだというところ。70…

『文字講座』本が届きました。

今週末ごろから書店店頭に並ぶ予定の書籍『文字講座』が完成し、手元に届きました。何度もゲラと向き合ってきましたが、こうして本の形となって手に取ると、ほんとうにうれしいものです。にやにやしながら手に取っては愛おしそうにながめ、なでまわし、ペー…

春の七草

1月7日。本日の朝食は、七草粥。七分がゆにほんのり塩味をきかせ、春の七草(セリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ、スズナ、スズシロ)を入れました。この飯椀は小泉誠さんデザインの「有田HOUEN 飯碗」。高台が大きくて持ちやすいのです。以前…

今年の手帳、結局のところ

2009年、最初のエントリーです。皆様、あけましておめでとうございます。さて、大晦日に大掃除を終えた後、新しいカレンダーと手帳を下ろしました。 カレンダーは、これ。ほぼ日ホワイトボードカレンダー2019 - ほぼ日刊イトイ新聞今年初めて買ってみたので…

2009年は「形にする」

気がつけば、あと数十分で2008年も終わりです。 クリスマスの日に『文字講座』を責了して以降は、年賀状やら大掃除やら、年越しの準備で怒濤の日々。またたく間に日が過ぎてしまいました。2008年も良い出会いに恵まれた一年でした。皆様に感謝です。ありがと…

とりあえず責了。

またしても前回の更新から10日以上経ってしまいました。2008年も残りあとわずか。 さてさて、予告をしてから音沙汰無しにしてしまった書籍『文字講座』ですが、12月25日に版元の誠文堂新光社さんに1日詰めて、三校のチェックをしてきました。本紙校正も出て…

あて名じゃない。

請求書を郵送するとき、封筒に「請求書在中」という文字を入れています。これまで手書きをしていましたが、ぼんやりしながら書いてふと見ると、「請求書御中」となっているのです。ちーがーうーーー!癖になっているのか数回その間違いを繰り返してしまい、…

手作業が基本

レイアウトラフを描いていた、ある日の昼下がり。写真点数が多くてうれしい悲鳴を上げながらセレクトするものの、生来よくばりなもので、あれもこれも載せたくなる。これを載せるならあれをやめよう、いやしかしこっちのほうが……とやってるうちに、混乱して…

文字の本を作っています。

早くも12月第一週が終わり……。 年末進行ということで、12月というのは例年バタバタするのですが、いくつかの仕事が佳境を迎えているというのは前のエントリーにも書いたとおり。そんな仕事のうちの一つが『文字講座』(誠文堂新光社刊/1月下旬発売予定)と…