こつこつと日々を営む

先日、神保町の「さぼうる」に行った。創業54年を数える老舗だ。植物の生い茂る外壁、入口には年月を重ね鈍く光るトーテムポールと赤電話。店内はランプの光でほんのりと照らされている。

コーヒーにはピーナッツ。

一緒に行った方に「チーズドッグがおいしいから」とすすめられ、3人で注文した。

想像していたのとまったく異なるチーズドッグが登場して、驚いた。わたしが食べたことのあるチーズドッグは、もっと生地がくにゃりとしたやわらかさで、それはそれで美味しかったのだが、さぼうるのチーズドッグは全然違う。キツネ色に輝くその姿にまず感動し、かぷりとかじりついてみて、カリッとした生地の香ばしさに唸る。焼きたてアツアツを食べることの幸せ。十数年前にはこの近くに勤めていたというのに、どうしてもっと早く来なかったんだろう。そう、「さぼうる」を訪れたのは、これが初めてのことだった。

50年以上この場所で、日々店を営む。青々と生い茂る植物に、毎日、水をやる。枯れることのないように毎日、手ずから。そのこつこつとした店主の営みは、とても美しいものに思える。

最後に、バニラアイスクリームを食べた。おさらのうえにまあるく盛られ、ウエハースが添えられている。よぶんなものはなにも足さない、素朴でやさしい味がした。