“向こう側”への想像力

以前、ある方と話していて、「世の中にあるほとんどすべてのものがデザインされていることを考えると、デザインというのはとても身近なことなのに、学校でデザインについて学ぶ機会がほとんどないというのは不思議なことだ」という話になったことがある。

身のまわりにあるほとんどすべてのものは誰かによって作られたもので、その作り手の存在を思うだけで「すごい!」と胸が熱くなるのだけれど、たいていのものに関しては、作り手がいるということは忘れ去られてしまっている。そう考えたとき、思ったのだ。

「結局、“その向こうには人がいるんだよ”ということを伝えたいのかな、わたしは。どんなジャンルにしても」と。さらにいえば、「“その向こうにいる人は、こんなに素敵な人なんだよ”と伝えたいんだ」と。

いま作っている書体デザインに関する本も、もとはといえば、そこから始まっている。モノのむこうにいる人の存在をいつも感じられる想像力をもっていたい、としみじみ思う。