ラストショウ:細谷巖アートディレクション展

8月18日、ギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)に「ラストショウ:細谷巖アートディレクション展」を観に行ってきた。

1階には細谷巖の自選ポスター(22点)新聞広告(2点)が展示されています。自選と言っても社会的評価が高かった作品ばかりです。すでに本や雑誌ではくり返し紹介されていますが、実物を展示したことはあまりありません。この機会にデザインの細部にご注目ください。
地下にはこの個展のための新作(48点)が展示されています。細谷巖が20歳くらいから今日まで50年以上のあいだ語ったり、記したりした言葉を印刷物、メモ用紙から掬いあげビジュアルにしたものです。1階と地下を通してご覧になると2つの階の作品は鏡を合わせたようになり、グラフィックデザインの発想をイメージすることができます。
秋山晶(コピーライター)

ギンザ・グラフィック・ギャラリー

展覧会、ことに地下は「言葉の展覧会」とも言えるような内容。細谷さんのシンプルに語りかける言葉は、とても胸に響く。しかしながら正直、言葉をこれだけ前面に出した内容は意外だった。

18日はギャラリートークが行われる日だった。サイトでは「細谷巖氏と当日まで秘密!の特別ゲスト」と告知されていたのだけれど、当日を迎えてみれば、特別ゲストは仲條正義さん、葛西薫さん、服部一成さんという超豪華メンバー。このお三方、2009年1月13日(火)〜 2月6日(金)にクリエイションギャラリーG8で行われた「仲條服部八丁目心中」つながりなのだそうだ(葛西薫さんはポスターデザインを担当)。

ギャラリートーク冒頭、細谷巖さんにその「意外な展示」の理由についてこう話されていた。
「自分自身を一度整理したい、そのためには自分をさらけださなければならないと前々から思っていた」
そういう決意のもと、さらけだされた言葉たちだから、胸に響くのだろう。

トークの途中で仲條さんがぽつりとつぶやかれた言葉が、細谷さんのデザインをとてもよく表していると感じた(細谷さんは謙遜されていたけれど)。曰く、「細谷さんはジャズが好きだというけれど、要するに細谷さんのデザインはスタンダードナンバーなんだよね。本質というものを50年間、考え続けてきたんだね」

そして、細谷さんのスタイルを貫き続けてきた。その「続けてきた」というところが、細谷さんのすごいところだと思う。

ところで、細谷巖さんといえば写植時代はMM-OKL(石井中明朝体)が代名詞だった。このごろは丸明オールドを使ったりもしていたが、今回展示された新作の言葉はすべて、小塚明朝で組んだそうだ。それが一番、しっくりきたと。いずれにしても、細谷さんの作品の文字組みからは、息を詰めて「そこしかありえない」という場所に配置したような絶妙な間合いというものを感じる。

特に細谷さんが19歳、20歳で日宣美に応募した「オスカー・ピーターソン」「勅使河原蒼風」のポスターの手仕事とは思えない完成度の高さ、美しさは、印刷物を通してでは十分に伝わらない。実物を観たときに受けた衝撃は忘れられない。

展覧会は8月27日(木)まで。