「世田谷でみかけた書体」展

某日、三軒茶屋キャロットタワーの生活工房ギャラリーで行なわれている「世田谷でみかけた書体」展を見てきた。

皆さんは通りがかりのお店の看板を見て
そこに使用されている書体名をズバリ言い当てることができますか?

街を歩けば必ず私たちの目に飛び込んでくる商店の看板や案内表示、ポスターに住所表示…。それらをよくよく見ると実に様々な書体が使われています。そんな生活に密着したデザインとも言える書体について、私たちはどれだけ知識があるでしょうか。そして、世田谷の街にはどんな書体が使用されているのでしょうか。

本展は「世田谷の街」を「書体」というフィルターを通して透かし見る企画展示です。書体デザイナーの竹下直幸さんが、世田谷の街々を隅々までフィールドワークし、区内全域の商店看板や案内板などをサンプリング。それらを使用書体別にざっくばらんにご紹介いたします。

街でみかけた書体」は書体デザイナーの竹下直幸さんが2006年の1年間、街でみかけたさまざまな書体を写真で紹介したブログで、ズバズバと書体名を言い当てるその書体知識の深さに舌を巻くと同時に、いつも更新を楽しみにしていた。

RSSリーダーに登録したままになっていたので、久々に更新されてる!と見に行ってみたら、今回の「世田谷でみかけた書体」展開催のお知らせで、これは絶対観にいこう!と決めていたのだった。展覧会開催前の2008年12月、1カ月限定で更新された「世田谷でみかけた書体」は変わらず楽しくて、展覧会への期待が高まるばかりだった。

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そんなわけで、訪問。
生活工房ギャラリーはとてもコンパクトなスペースだ。会場に足を踏み入れると、街をいろどるさまざまな文字の写真が、壁じゅうを覆いつくしている。そしてもちろん、その一つひとつには使用書体名が添えられている。看板は書体そのままでインパクトのあるファンシー書体を用いているものがやはり多いんだな、世田谷を走る電車はそれぞれ路線によってこの書体を使っているんだな、行政関係のものは汎用性の高い、どのPCにも入っているようなスタンダードなフォントを使っているものが多いのかな、などと考えながら観るのは、とても楽しい。

とりわけうれしくなったのは、「放置自転車整備事業」だったか、放置自転車を整備する方々がつけているゼッケンや、世田谷区内のあちこちに設置されている消化器、そして資源ゴミ回収のコンテナといったモノたちの実物が展示されており、その書体が解説されていたこと。モノがそこにあると、テンションが上がる。キャプションにあった「世田谷の消化器はにぎやかです」の一文に、今度他の地域でも気をつけて消化器を見てみようと思った。

それにしても。
街のなかで実際に息づいている「生きた文字」の風景を切り取ることで、「文字」がこんなにも楽しく見え、それは「文字があふれる風景」をも楽しくする、という視点を提示してくれた竹下さんのアイデアと行動力に、あらためて感動を覚えた時間だった。

「世田谷でみかけた書体」展は2009年2月1日(日)まで。