Helvetica展「A tribute to Typography 〜ヘルベチカの過去・現在・未来」

ラフォーレミュージアム原宿で昨日からスタートしたHelvetica展「A tribute to Typography 〜ヘルベチカの過去・現在・未来」を観に行ってきた。

1957 年に、スイスのハース鋳造所でエドワード・ホフマンとマックス・ミーディンガーによってデザインされたと言われているサンセリフ系のローマ字書体、ヘルベチカ。当初はノイエ・ハース・グロテスクと呼ばれていましたが、1960 年に改名。以降、様々な形で改良、そしてファミリーを増やしながら、世界中で爆発的に普及。
(中略)誕生後約50年が経過するヘルベチカは、現代においても、文化・国家の壁を越え、多くのシーンで用いられています。日本においては1964 年の東京オリンピックではじめて制定書体となり、日常生活の身近なところでヘルベチカを目にする事ができます。また、コーポレート・タイプ(企業の制定書体)としても多用されています。
デジタル時代を迎えた現在も、No.1 の普及率を誇る書体であり、つまり、世界で最も愛されている書体、それがヘルベチカです。

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本展は、10 月24 日に発売となるデザインドキュメンタリー映画『ヘルベチカ 〜世界を魅了する書体〜』(発売:アスミック・エース エンタテインメント)の発売と合わせ、そのヘルベチカという書体を軸に、金属活字、見本帳、ポスターなどからはじまるさまざまなグラフィックを紹介します。あらゆる人々にとって今や欠かせないものとなっている“文字のデザイン” について、様々なアプローチで迫ります。

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単一の書体をテーマとした展覧会が開かれる。そう知って、これはぜひとも観に行かねば!と開催を心待ちにしていた展覧会だった。会場に着くと、ヘルベチカのオリジナル金属活字(ステンペル社)を用いて印刷したポストカードがもらえた。これは先着順で、なくなり次第終了なのだそう。

展示は大きく6つの構成から成っていた。

01:金属活字とHELVETICA
02:グラフィックデザイン for HELVETICA
03:HELVETICA とヴィジュアルアイデンティティ
04:アルバムジャケットアートfor HELVETICA
05:HELVETICAに挑む
06:Helvetica シアター

ヘルベチカの特徴や他の書体との比較を解説したパネル展示は、興味深かった。ヘルベチカを用いたグラフィックデザインの作品や、アルバムジャケットアート作品はどれも力強く潔く、魅力的だった。

けれども、会場がコンパクトなせいか、展示自体もかなりコンパクト。しかも、展示作品の解説があまり親切でない。展覧会では通常、会場に入ってすぐに「はじめに」「ごあいさつ」とでもいうような、コンセプトの解説文がある。それが、ない。「あいさつ文なんて要らない」と思われるかもしれないが、展覧会である以上、なぜいまヘルベチカの展覧会を行なうのか、なにを伝えたいのか、企画意図を示してほしい。

作品それぞれについても、ごく短くでもいいから解説がほしかった。「05:HELVETICAに挑む」に至っては、せっかく服部一成groovisions、古平正義、大日本タイポ組合菊地敦己、岩淵まどか、PAPIER LABO.の諸氏がヘルベチカを用いた作品を出品しているのに、どれがだれのなんという作品なのかまったくキャプションがつけられていなかった。見落としではないと思うのだが…。

ウェブの更新も遅れていたようで、昨日サイトをチェックした時にはトップページしかできておらず、ドキュメンタリー映画Helvetica』の上映タイムスケジュールを事前に調べることができなかった。会場にもその情報は掲示されていなかった。なぜ? せっかくの魅力的なテーマでの展覧会なのに、展示が不親切で、ただ「ヘルベチカに関するものを置いてみました」という域を脱していないように感じたのが残念。スタート2日目だったから、もしかするとこの後、改善されるのかもしれないが…(とはいえ展覧会は28日(火)まで)

…と、苦言ばかり呈してしまったけれど、この展覧会のなによりの魅力はドキュメンタリー映画Helvetica』の上映、と考えれば、入場料300円で全編を観ることができるのは素晴らしい。映画は、とてもよかった。ヘルベチカが実際に使用されている風景のスタイリッシュな映像をはさみながら、若手からベテランまで数々の書体デザイナーやグラフィックデザイナーたちが、ヘルベチカについて熱く語るシーンがつながれていく。たった一つの書体に対してこれほどまでに多くの人が、これほどさまざまに語る内容を持つといういことに驚き、胸が熱くなる。音楽もとてもいい。

スペシャル・エディションDVDは10月24日(金)に一般発売とのこと(展覧会会場では先行発売されている)。DVDの購入を迷っている「書体好き」さんがいたら、展覧会に足を運んでみるといいかもしれない。

*公式サイト
Beginners Make Photo

*参考サイト
http://blog.petit.org/?eid=12019
http://mainichi.jp/enta/cinema/dvdreview/news/20081003org00m200028000c.html
書体「ヘルベチカ」に迫る企画展-気鋭デザイナーら独自作品も - シブヤ経済新聞