文字は語る「浅葉克己さんに聞く 痕跡から生まれる文字」


取材・執筆を担当している月刊DTPWORLDの連載企画「文字は語る」、2008年9月号*1は、アートディレクターにして地球文字探検家の浅葉克己さんが登場。7月19日から9月23日まで21_21DESIGN SIGHTで開催されている「祈りの痕跡。」展を通し、「文字」「書くという行為」「痕跡」について考えたことを語っていただきました。

浅葉克己さんと聞いて、みなさんは何を思い浮かべるでしょうか。ウディ・アレンを起用した西武百貨店おいしい生活」の広告? 「生きている象形文字トンパ文字? はたまた、ひとりピンポン外交?

サントリーミサワホーム西武百貨店など数々の広告のアートディレクションを手がけてきた浅葉さんは、デザインの世界に足を踏み入れてまもないころに、生涯を通じ探求するテーマ「文字」と出会いました。職場の先輩の紹介で文字デザイン研究者・書体デザイナーの故 佐藤敬之輔氏(1912〜1969)と出会い、その研究所に入ったのが出発点です。佐藤氏は戦後、米軍の印刷所に勤めた際にタイポグラフィに出会い、1954年に初の著書『英字デザイン』を丸善から出版して以降、『英字スタイル』(ダヴィッド社、1956年)、『日本字デザイン』(丸善、1959年)、『英字システム』(ダヴィッド社、1963年)、「文字のデザインシリーズ」全6巻(丸善、1964〜76年/第1巻は未刊)、文字のデザインテキスト『日本字デザイン』全2巻(丸善、1970〜71年)、『日本のタイポグラフィ 活字・写植の技術と理論』(紀伊国屋書店、1972年)と続々とタイポグラフィについて論理的に解説した著書を発表した*2方です。どちらかというと理論派だった佐藤氏のもとで、実際に文字を書き起こしていたのが、浅葉さんだったそうです。つまり浅葉さんは、戦後日本の文字デザインを影ながら牽引してきたということになります。

アートディレクターとして仕事をするようになってからも浅葉さんの文字への探究心は途絶えることなく、現在でもまず臨書を行なうことから一日が始まるのだとか。「文字」「書くという行為」について考え続け、実践し続けてきた浅葉さんが語る言葉は、私たちに「文字」についての新たなインスピレーションを与えてくれる力を持っています。なにより、心から「文字」を好きな人が語る「文字話」は、ただただ楽しいのでありました。

*1:http://www.wgn.co.jp/store/dat/0123/

*2:1950年、占領米軍の印刷工場に入所して欧文活字書体に接する。CIE図書館で米国の書体デザイナー、フレデリック・ゴウディーの『A Half Century of Type Design and Typography 1895-1945』と出合い、本格的に活字書体研究と取り組む。1954年、初の著書『英字デザイン』(丸善)で、欧米の書体分類を導入した欧文レタリングを紹介。以後、統計・数量的分析法による文字デザインの理論と実践の両面で活躍。/描き文字考序2/10掲載の佐藤敬之輔氏プロフィールより