「小袖 江戸のオートクチュール」展

某月某日、サントリー美術館*1にて「初公開 松坂屋京都染織参考館の名品 小袖 江戸のオートクチュール」展も観てきた。

江戸時代の服飾形式の中心であった小袖は、形がシンプルなため、模様や色などの意匠を見せることが重視された衣服です。上層階級の女性たちは、小袖の意匠に想いをめぐらし、常に新しい表現を求めました。呉服商は、注文主である女性たちへ意匠を提案し、作り手との仲介者となり、小袖が仕立てられました。小袖はまさに江戸時代の高級注文服(オートクチュール)として生み出されたのです。
季節や着用の場面に合わせて選ばれた小袖の意匠には、花や草木、風景の表現が多く見られ、自然の情緒を大切にする日本人の季節感が豊かに表出されています。また、身辺を飾る多彩な調度や器物を斬新な意匠へと昇華させるとともに、和歌や物語などの古典文芸を思い起こされる意匠を表すなど、小袖における独創的な表現からは背景となる日本の文化がうかがえます。
本展では、松坂屋京都染織参考館が呉服意匠創出のために収集した染織資料から、江戸時代初期より後期までを網羅する内容の小袖と、意匠の変遷を辿る上で重要な資料となる雛形本をはじめ、多彩なコレクションの一端を示す能装束や調度品など約300件をご覧いただきます。

http://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/08vol04kosode/index.html

季節感を表す自然の情景、植物や生物がモチーフとして用いられるなかで、文字がデザイン要素の一つとして用いられている小袖がいくつか見られたのが興味深かった。意匠のなかに物語や祈りを込めるだけでなく、文字そのものを施している。文字自体の造形を美しいモチーフと見ていた部分もあるのだろう。刺繍された文字は、もととなっているのが恐らく筆で書かれたものであること、さらにその筆致に沿うように糸をめぐらせ刺繍されていることから、それ自体がまるで生き物のような勢いのよいうねりと力強さを持っていた。こんなところでも、人はやはり、思いを留めずにはいられないのだなと思いながら観た。

もう一つ興味を引かれたのが、「江戸時代の流行通信」=「雛形本」。

江戸時代の女性たちは新たに小袖を作るとき、最新流行の模様を掲載した、現代のファッションブックといえる「雛形本」を参考にしました。

http://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/08vol04kosode/index.html

美しい意匠を凝らした小袖が生まれた背景が見えるようで、楽しかった。和装割引があるようだったけれど、わたしが行った時には和装の人は見かけなかったな。