「つつむ・むすぶ・おくる」〜「新包結図説・展」トークショー

昨日、山口信博さん(折形デザイン研究所)と石倉敏明さん(多摩美術大学芸術人類学研究所)のトークショーに行ってきた。

折形デザイン研究所の新・包結図説―つつむ・むすぶ・おくる

「新包結図説・展」は昨年11月、十和田市現代美術館で開催された展覧会。観光シーズンをはずれていたにもかかわらず、約3000人の来訪があったそうだ。

「折形」は、贈りものを清らかな和紙に包んで贈る日本古来の礼法。そして、江戸時代中期の有職故実家・伊勢貞丈の著書『包結図説』は、その様式とルールを集大成した、いわば折形のバイブルにあたる書物です。
長く受け継がれてきた作法の意味を踏まえつつ、そこに現代感覚を注ぎ込み、生活における折形の再認識に取り組む折形デザイン研究所。「包み」と結び」、そして「贈与」のありかたそのものに思考を遡行させながら、知の技術である「デザイン」を用いて造形化する試み。それは、過去と未来、東洋と西洋、人ともの、伝統とモダンの境界を超えて融合へ向かうという志に裏打ちされています。
2001年の設立から8年。収集した資料をもとに、豊かに模索し続ける、贈るための「かたち」。折形デザイン研究所が生み出す新しい時代の包結図説、そのはじめての展覧会です。

「新包結図説・展」チラシより

2月23日(火)より、遠方のため行くことができなかった人たちのためにと、東京・表参道の折形デザイン研究所で報告展が開催されている。今回のトークショーは、十和田市での展覧会にあわせてつくられた『折形デザイン研究所の新・包結図説』の出版を記念しての催し。石倉さんはこの本に「包み」についての文章を寄せている。

トークショーではおふたりの「贈与」「包み」「結び」についての想いが語られた。山口さんはかつて古書店でたまたま伊勢貞丈の『包結図説』に出会い、そこに描かれた折形の造形の美しさに魅せられて、折形デザイン研究所の活動を始めた。はじまりは、純粋に「かたち」に対する興味だった。しかし折形は「贈りものの包み」だ。折形を知るほど、「なぜ人は贈りものをするのか」「なぜ和紙で包むのか」「なぜ型をもっているのか」「なぜ結びで結ぶのか」と疑問を抱くようになり、“贈与”ということをもっと深く知りたいと思うようになったそうだ。そうして、中沢新一氏の本を読み解く読書会を石倉さんらとともに始めたのだという。

石倉さんのお話のなかで印象的だったのは、「ギフト」をめぐる考察。「ギフト」には、「贈りもの」のほかにもうひとつ、「芸術を生むときのように、どこから来るかわからないがふっと発想がわいてくる現象」を指す意味もある。そして「包」という字は「母の胎内に子が包まれている様子」を表しており、「包まれる」ということは「生まれる」ことにつながると。だから「贈りものをする」ということには、「人間が生まれる」という意味を隠しているのでは?というものだ。

行為のなかに隠されている意味を知ると、その「かたち」の理由、そこに込められている思いがわかるかもしれない。

折形デザイン研究所で開催されている報告展は、本日(2/28)まで。