活字地金彫刻師・清水金之助さん米寿記念実演会

1月10日(日)、大田文化の森で開催された、清水金之助さん第二回個展(活字地金彫り*1実演会)を見てきた。

会場に着くと、中央に座った清水さんを取り囲んで、熱心に見入る人、人、人。そこに熱気のかたまりのようなものができていて驚いた。会場に凝った展示を用意したわけではなかったけれど、清水さんの存在があればいいのだ。それほどまでに清水さんの存在感は大きく、その手業は人々を引きこむのだということを、あらためて感じた。

この日、88歳のお誕生日を迎えられた清水さん。米寿記念の実演会を自ら企画なさったとのこと。4時間近く休むことなく、地金彫りの実演を続けておられた。そのバイタリティに脱帽。いつものように、手もとではごく小さな活字材に神業のように逆字を彫り上げていきながら、来場者に気さくに話しかけ、にこやかに質問に答えていらした。その姿に、今回もまた、元気をいただいた。

会の終了後は、お祝いの席に参加させていただいた。米寿のお祝いに立ち会わせていただくなんてなかなかないことで、とてもうれしい。一人の職人としてひたすらに彫り続け、決して表に出ることのなかった清水さんに、いまこうしてやっと光が当てられているということも、よかったなあとしみじみ思う。

清水さん、ほんとうにおめでとうございます。ますますお元気にご活躍されることを、心からお祈りしています。

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ところで、今回の実演会では、ちょうど会場にいらしていた丸明オールド作者の片岡朗さんがいろいろなかたと引き合わせてくださったこともあり、これまでずっとネット越しでブログなどを拝読していた方々に何人もお会いすることができた。なかには、その前日に Twitterでフォローしたばかりだった方も。「はじめまして」とごあいさつするのが不思議なくらいだったりして、おもしろいなあとつくづく。

当日お会いできたみなさま、ありがとうございました。お目にかかれて、うれしかったです。またゆっくりお話できる機会があることを楽しみにしています。当ブログも、もうひとつの「文字の本を作っています。」も、のんびり更新ではありますが、今後ともどうぞよろしくお願いします。それまではまた、ブログやTwitterでお会いしましょう。

*1:活字地金彫(活字直彫、種字彫刻)とは、活版印刷で使われる活字のもととなる母型(凹型)を作るための、さらにもととなる種字(父型)を、鉛と錫の合金である活字材に左右逆字でじかに凸刻していく技術のこと。