「三保谷硝子店 101年目の試作展」創造と技術の関係

先週、11月8日まで開催されていた「三保谷硝子店 101年目の試作展」を観に行ってきた。場所はアクシスギャラリー。

国産のガラスが産声を上げて間もない1909年(明治42)に創業した三保谷硝子店は今年100周年を迎えた。その家業が大きな転機を迎えるのは1970 年代、三代目三保谷友彦と鬼才倉俣史朗氏との出会いからである。ここから三保谷硝子は、「デザイン」の領域へと大きくシフトしていく。以後、あの名作「硝子の椅子」をはじめ、溢れる倉俣のインスピレーションを独自の技術力で具現化し支え続けた。それは単なるデザイナーと職人の出会いや、単なる素材としてのガラスという次元を超えて、デザインとガラスの関係を新たな地平へと切り開き、ガラスそのものが表現媒体となる「ガラス・デザイン」という新たなデザイン概念を創出したと言っても過言ではない。
 本展は、そうして培われた三保谷硝子の技術力を駆使して、三保谷の心意気に心酔する16組のクリエイターたちが「ガラス・デザイン」の新たな表現に挑む試作展である。

http://www.axisinc.co.jp/publishing/exhibition/200910.html

ガラスを用いた表現の広さに唸りながら会場を観てまわったが、なにより感銘を受けたのは、三代目三保谷友彦氏と鬼才倉俣史朗氏との出会いが生み出した作品の数々と、その背景にあるエピソードだった。

「ガラスは割れる瞬間が一番美しい」という倉俣史朗の言葉を受けて、三代目三保谷友彦は「割れガラス」という技術を開発した。

「UV接着剤により、ガラス同士の接着が可能になった」という三代目三保谷友彦の言葉を聞き、倉俣史朗はわずか30分で、名作「ガラスの椅子」の図面を描き上げた。

クリエイターがひとりで在るだけでは、作品は生まれない。クリエイターと職人、創造と技術の美しい関係が、そこにはあった。そのことに思いを馳せ、身震いした。