企画展「ポッタリ一つで海を越えて」−−昭和のくらし博物館

9月5日(土)から始まっている昭和のくらし博物館の企画展「ポッタリ一つで海を越えて」の展示作りおよび図録執筆*1を、研究会メンバーの一人として手がけました。

「ポッタリ」ってなんだろう? と、このタイトルを見て思われている方が多いのではないかと思います。「ポッタリ」とは「風呂敷包み」のこと。在日コリアンの人々の昭和のくらしを取り上げた企画展なのです。

昭和のくらし博物館の企画展は、原則として1年を期間に(今回は例外的に2年間でした)、館長の小泉和子先生が主催する研究会を通してメンバーが調査研究を進め、その成果を展示と図録という形で発表しています。企画展テーマを先生から告げられたとき、はたして、わたしたちに本当にできるのだろうか、という不安しかありませんでした。このテーマに取り組むには、わたしたちはあまりに無知で、あまりに力不足ではないかと。どこに行けば聞き書きができるのか、そういうことひとつとっても手がかりのほとんどない状態から、この企画は動き出しました。

小泉館長が「ごあいさつ」でも書いているように、なにをどのようにやったにしても多くの問題が残る、むずかしいテーマです。昭和のくらし博物館の力でできることも限られています。わたしたちの展示は、いえ、展示を行うこと自体が、在日コリアンの方々の反発を招くかもしれませんし、見当違いだと叱られるかもしれません。

それでも。
<それでも「くらし」という、人間が生きていく上では共通の問題を手がかりにして勉強していったら、何か得られるのではないかと考えたのです。>

本を読んでいるだけでは見えてこないものが多すぎる、だからわたしたちは、調査をしていくなかで出会った川崎のトラジの会に何度か通い、ハルモニ(おばあさん)たちにお話をうかがってきました。まだだれになにを聞いてもよいかわからない状態のとき、お話を聞かせていただきたいとお願いに行ったら、あるハルモニはにっこり笑って手を握り、「どんな話が聞きたいの? なんでも教えてあげるよ。今度、遊びにきてね」と言ってくれました*2。多くの方がそうやって協力してくださって、動き出したときには「はたしてできるのだろうか、本当に」と思っていたこの展示を、どうにか形にすることができました。

あらためて。昭和のくらし博物館 第9回企画展は、「在日のくらし−−ポッタリ(風呂敷包み)一つで海を越えて」展です。故郷を遠く離れたくらしのなかで、変わったこと、変わらないことは、なんだったのでしょうか。展示されている、住まい、食生活、生計を支えたドブロク、衣服、お産、冠婚葬祭、ある家族の歴史、そして娯楽にまつわるさまざまなモノを通して、在日コリアンの方々の昭和のくらしの様子を追う展覧会です。展示期間は約1年間、2010年8月末までの予定。ぜひ足をお運びいただければ幸いです。

昭和のくらし博物館
東京都大田区南久が原2−26−19
開館時間:午前10:00 〜 午後5:00 月曜・年末年始休館
URL : http://www.showanokurashi.com
入館料:大人 500円・小学生〜高校生・友の会会員 300円

*1:図録は現在制作中で、10月初旬に発行予定です。

*2:http://d.hatena.ne.jp/snow8/20080518/p1