「サンデー・マガジンのDNA」「堀内誠一展」「赤塚不二夫展」

最近、川崎市民ミュージアムの「サンデー・マガジンのDNA」、世田谷文学館の「堀内誠一 旅と絵本とデザインと」、松屋銀座追悼 赤塚不二夫展 ギャグで駆け抜けた72年」の3つの展覧会を立て続けに観てきた。

堀内誠一赤塚不二夫、どちらも天才である。堀内は『anan』『POPEYE』『BRUTUS』の創刊アートディレクターにして、『ぐるんぱのようちえん』ほか数々の名作を残した絵本作家にして、『パリからの旅』などの著作をもつ旅行家……と、多彩な方面で才能を発揮した希有な人物。赤塚不二夫は言わずもがなのギャグマンガの神様。その彼らの展覧会は、それぞれの世界観をとてもよく表していた。堀内はその多才ぶりを、赤塚は予測のつかなさと、彼自身の人生すべてが作品であったように*1、展覧会の空間もまた、それを構成するすべてが作品となっていた(それはもう、本当にすべてが。変なところにキャプションがついていると思ったら、天井にマンガがあったり……)、というふうに。

一方の「サンデー・マガジンのDNA」展もまた充実の展示ぶりであったのだが、どこかものたりなさが残るのは、「一人の作家を掘り下げる」のでなく雑誌そのもの、それもふたつの雑誌を取り上げたということに起因しているのかもしれない。マンガのテーマが時代の流れとともにどう移り変わっていったのか、そういう流れはとてもよくわかる。自分自身の歴史や思いでと重ね合わせて共感できる。ただ、多くの時代の多くの作家の多くの作品を取り上げる必要があるため、どうしても、原画はあるページや表紙などの1枚で展示されるものが多かった。赤塚不二夫展や、過去に「最後のマンガ」展を観て思ったのは、「マンガは読みたい」ということだ。一枚の原画を美術作品のように鑑賞させるという手法では、もちろん作家の描いた生の線を見るという楽しみはあるものの、マンガの世界観を伝えるのはむずかしいのかもしれない、と思った。

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それにしても、赤塚不二夫の原画は美しかった。線がとてもきれいだった。そして堀内誠一の絵地図。カラー版の上にトレーシングペーパーをかけてスミ版を作っているものが多いのだが、カラーとスミを分けず、直接カラーの地図に文字を描き込んでいるものもある。細かい文字がびっしりなのに、修正個所がまったくなかったりして舌を巻いた。さらに、堀内展、赤塚展とも、図録そのものも一冊の本としてとても楽しめる。とくに赤塚展図録の懲りようはすごい。これからじっくり楽しもう。

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ちなみに、堀内誠一展は明日(9月6日)まで、赤塚不二夫展は明後日(9月7日)まで、そして「サンデー・マガジンのDNA」展は9月13日まで。まだ観ていない方は急いで〜!

川崎市民ミュージアム http://www.kawasaki-museum.jp/
世田谷文学館 http://www.setabun.or.jp/

堀内誠一展図録

堀内誠一 (コロナ・ブックス)

堀内誠一 (コロナ・ブックス)

*1:1974年、実験的に山田一郎というペンネームに改名し、連載中の作品をすべて同名義で執筆したが、3ヶ月で元に戻したという「山田一郎事件」のエピソードを読んで、この人は人生そのものをかけてギャグを生み出していた、人生そのものが作品だったのだと感動した。