すべての創造の源は

先日、粟津潔展を観に行ってから、会場に散りばめられた粟津氏の言葉に惹きつけられ、その著作を読みたいと強く思うようになった。そこで最初に手に取ったのが『粟津潔 デザインする言葉』。この本は、彼が1960年代から今日に至るまでさまざまな書籍で考察してきたデザインについての言葉を抜粋し、原画やスケッチ、写真などとともにまとめた一冊だ。

粟津潔 デザインする言葉

粟津潔 デザインする言葉

デザインというものを真摯に見つめ、そこにまさに心血を注いできた粟津氏の言葉に、幾度も心を強く揺すぶられた。

とりわけ、「ものを作る創造の仕事とは、問いをもつことである」という言葉がくり返し登場したことが心に残った。たとえば、こんな言葉たちだ。

結局、ものを作る創造の仕事というのは、たぶん世の中のさまざまなことに疑問をもつこと。あるいはわからないことばかりなので、懸命に一つ一つ自分のものとして、知ろうとする、それが一つの想像力、イマジネーションにつながっていくのではないかと思うのです。(P.164)

私は好奇心の塊のような人間で、今日までやってきた。自分自身に関心のあることであれば、何処へでも出かけ、わからぬことのために読書に更けることも多かった。
絵やデザインの仕事は、感覚や閃き、イメージの仕事だが、それだけでもない。事物や空間に対して、たえず質問を用意することだと思ってきた。(P.185)

友人の詩人、寺山修司君(詩人・劇作家、一九三五〜八三)が、この世に「質問」を用意することが、ものを創造することの始まりだといっていました。とりわけ少年時代は、わからないことばかりであり、疑問を持つことが、想像力を養う大事なことだと思うのです。(P.20)

学ぶということは、本来自己主体的なもので、本人次第の感受の仕方や在り方であると思う。大いなる質問こそ、大いなる学問であるのだろう。(P.14)

はじめに問いがあり、彼はその答えを見つけるべく絵を描いた。わたしは文章を綴る。答えを探るために、それぞれの創造がある。

すべての「創造」は「問い」から始まる。
問いは創造を生み出すのみならず、「生きること」は「問うこと」の繰り返しであると言えるかもしれない。


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