グーテンベルク「42行聖書」の前で

印刷博物館の企画展「ミリオンセラー誕生へ! −明治・大正の雑誌メディア−」を観た後、総合展示を駆け足で。何度か訪れていながら、いつも十分な時間がとれず後悔します。

今回はグーテンベルク「42行聖書」原葉の前で立ち尽くしてしまいました。
いま作っている『文字講座』という本にも、グーテンベルクの「42行聖書」の名が登場します。印刷された図版を何度も眺めていましたが、あらためて実物を前にして、あまりの美しさに絶句しました。紙から、力強い印圧を感じる黒々としたブラックレターの文字から、手で書き加えられた繊細な装飾から立ちのぼってくる厳かな美しさ。思わず息を呑むあの空気は、印刷された図版からは残念ながら感じることができません。確かに人の手を通して作られたという存在感が放つ光なのでしょうか。実物のみがもつ凄みに圧倒され、実物を観ることの大切さをあらためて痛感した一日でした。