福田繁雄展「ハードルは潜(kugu)れ」
リクルートの2つのギャラリー、クリエイションギャラリーG8とガーディアン・ガーデンで開催されている展覧会、タイムトンネリシリーズVol.27福田繁雄展「ハードルは潜(kugu)れ」を観てきました。
本展では、福田氏のデビュー当時から現在に至るまでを、二会場でご紹介します。
http://rcc.recruit.co.jp/co/exhibition/co_tim_200811/co_tim_200811.html
クリエイションギャラリーG8では、1960〜70年代制作のおもちゃやトロフィー、小型彫刻などの立体作品を中心に、ポスターのモチーフとなる作品も展示します。また、ガーディアン・ガーデンでは、これまでに手がけた3,000枚に及ぶポスターの中から、福田氏が選出した「ポスターベスト50」や、そのアイデアスケッチをご紹介する予定です。
「ポスターベスト50」、圧巻でした。
福田さんのポスター作品の数々は、写真を使いません。自ら描いたイラストレーションを用いる。文字が入る場合も、時によってごく短いコピーが入るくらいで、インフォメーション部分はごく小さく入っている。瞬時に目に入るのはイラストレーションだけです。
それが、とてつもなく、強い。
強いというのは、「自己主張が強い」ということではありません。押しつけがましい個性の演出とは同義ではありません。
ひと目見て、すぐにわかる。言葉に頼っていないから、民族に関係なく、だれにでもわかる。
「伝達のスピードが速い」というとごく簡単なメッセージを伝えるだけなのかと思うかもしれませんが、イラストレーションで瞬時にメッセージを伝えていながら、そのメッセージはとても深く響く。時には、刺さる。
ほんとうに、強いのです。
会場に、「グラフィックデザイナーと絵描きの違い」についての福田さんの言葉がありました。
音楽は音で、文学は活字、僕達は絵で見せるんだとなるのです。ここまではグラフィックデザイナーと絵描きの違いはない。違うのは、芸術家は自分の感性、もっと言うと精神とか魂を色と形にぶつける、あくまでも自己表現だけど、僕らが表現するのは自分じゃないんです。多くの人に見てもらって、わかってもらうことが仕事ですから。
伝えたいのは自分自身ではなく、クライアントの、あるいは社会のメッセージであると。
そして、別の文章から。
嬉しいか、怒っちゃうか、哀しいか、楽しいか。人減の感情がこの四つだとしたら、やっぱり僕は、嬉しいのと楽しいのしか無いと思う。どんなに嫌な内容でもおもしろく伝えないと。それができなければ見てくれないですよ。
福田さんは「嬉しいのと楽しいのしか無い」と語っておられますが、ポスターが語りかけるメッセージはもちろん、怒りや哀しみの時もある。けれど、たとえば「怖い話」をいかにも怖そうに話すより、淡々とこともなげに話されたほうがゾクゾクと恐怖が募るのと同様に、「怒ってるぞ!」「哀しいんだぞ!」という顔で語りかけられるよりも、一見楽しい、嬉しい表情の奥に瞬時に怒りや哀しみを感じ取らせるからこそ、見る人の心により鮮烈な印象を残す。それが福田さんの作品の強さの一つではないでしょうか。
会場には、ポスターのラフスケッチも展示されています。アイデアが練られていく様子がわかって楽しいのと同時に、ラフスケッチ段階から線の美しさ、デッサン力の高さにため息がもれます。
会期は11月21日(金)まで。ポスターはそれ自体が印刷物ではありますが、実物のもつ力は、作品として本に所収されたものとは比べものになりません。立体作品は言わずもがなです。
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