『すぐに稼げる文章術』日垣隆

『すぐに稼げる文章術』とはまた、なんともえげつないタイトルである*1。「これ読んだよ」と言うのがためらわれるくらいに。

けれど、ちょっと待てよ。「すぐに稼げる」というと、片手間にちょちょいっと文章を書いて簡単にお金が稼げますよ〜というアヤしい在宅ワークのようなイメージがわいてしまいそうだが、そうじゃない。「稼げる」ということは対価として金銭をいただける、すなわちプロとしてやっていけるということだ。それを「すぐに」実現するというのだから、「それだけわかりやすく文章術を解説した本ですよ」という自信があるということじゃないだろうか?

「稼げる」文章を書くには、その文章がどう読まれるかをあらかじめ考え、想定した読者を飽きさせない工夫を凝らしながら書くことが必要とされる。さらりと書いたけれど、これは大変なことだ。そのポイントが具体例を交えながらわかりやすく解説される。特に“第1章「どう書くか」より「どう読まれるか」”の“「読ませる」ための7つのポイント”と“第5章 発想の訓練法”はとても参考になった。さらに第6章では“こうすれば稼げる Q&A”として、フリーランスライターとして食っていくためにどうすればよいのか、具体的なノウハウから戦略にまで答えている。

そういえば、近ごろわたしは日垣本づいている。日垣氏は本書のなかで「フリーで食っていくために一番大切なことは」という質問に対し、第一に経営感覚、第二に楽しく生きること、そして三番目に「文章に中毒性をもたせること」と答えている。<<読者をリピーターにしていくためには、文章に中毒性を織りこむことは欠かせません。フリーとして仕事を続けていくためには、文章の中に覚醒剤のようなものをいれこむことが大切だと思います。>>(P.160)と。

日垣氏の文章に仕込まれた覚醒剤とは何だろう。すなわち、日ごろ頭のすみになんとなくもやもやと存在していた引っかかりに具体的な言葉を与え、その姿かたちをはっきりと見せてくれる気持ちよさだろう*2。知らぬ間に術中にはまっていたということか。

すぐに稼げる文章術 (幻冬舎新書)

すぐに稼げる文章術 (幻冬舎新書)

*1:ご本人もあとがきで述べておられるが。

*2:これは内田樹氏の文章にも通じる