「天童木工PLYコレクション展 天童木工とデザイナーの軌跡〜坂倉準三建築研究所/長大作」

「建築家 坂倉準三展」を観た後、エキサイトイズムの記事「Web Magazine「エキサイトイズム」 | ism.excite.co.jp」で天童木工PLYの展示のことを知り、足を運んできた。

卓越した成形合板(プライウッド)技術で知られる老舗家具メーカー天童木工昭和15年に設立して以来、その技術は世界でも有数のレベルとして知られている。(略)天童木工とともに製作を手がけたデザイナーに焦点を当て、貴重な資料を通じてその軌跡を紹介するPLYコレクション展

(展示会場パネルより)

そのなかで今回は、坂倉準三建築研究所/長大作に焦点が当てられていたというわけだ。こぢんまりとしたギャラリースペースに、長大作氏が坂倉準三建築研究所員時代から現在に至るまでにデザインした名作家具の数々が展示されていた。作品保護のため、直に座ることはできない椅子がほとんどだけれど、ごく間近に作品を見ることができて、楽しかった。

会場に掲げられた長大作氏の年譜を見て、まず驚いた。1921年、6人兄妹の長男として誕生。

「天才と狂人は紙一重だから」といって次男に「狂平」と名づけた父親も、絵を描くときに「狂仙」という画号を使っていた。

とある。兄妹のうち3人が東京美術学校(現・東京藝術大学)に進学したというから、芸術家肌の一家だったのだろう。考えてみれば「大作」という名前もすごい。

けれど長大作氏の作品には、そうした父親のエキセントリックなところが継がれているふうはなく、有機的でやわらかな曲線をもちいた、やさしいデザインの家具たちだった。ことに、ゆったりとした曲線で三角を描いた「おむすびテーブル」が、その特徴をよくあらわしているように感じた。キャプションにはこうあった。

柿の実を切った断面からインスパイアされて誕生した有機的な形状はデザイナー本人の温和な人柄を表しているかのよう。そのユーモラスなネーミングにも注目。

今年米寿を迎える長大作氏は、現在も現役で活躍中だそうだ。そしていまなお、新しいデザインを追い求めている。

「私のデザインはいつも発展途上にあって、まったくの完成形というものはありません。特にイスの場合は座り心地のよさを追求し、改良を重ねています」

Web Magazine「エキサイトイズム」 | ism.excite.co.jp

会場に置かれた低座椅子、中座椅子には実際に座ることができる。低座椅子にはパナソニック電工 汐留ミュージアムでも座ってきたが、もう一度、腰を下ろして堪能。氏が座り心地のよさを改良し続けているというその姿勢を、なにより感じさせてくれるひとときだった。こちらの展示も9月27日(日)まで。

http://www.tendo.ne.jp/ply/