謎は決して解き明かされないし、悩みは尽きることがない。
若いころは、なんでも白黒はっきりしないといけないものだと思っていました。いまは悶々と悩んでいるけれど、どこかにきっと悩みのまったくない世界が開けているのだと信じていて、どうにかしてそこにたどり着きたくてもがいていました。努力すればわからないことはわかるようになり、謎は解き明かされれば減っていくのだと思っていました。
けれど、ある程度年齢を重ねて(やっと)わかったのは、生きている限り、悩みが尽きることなどないし、謎が解明されつくすこともないということ。
寺田寅彦*1が「科学は不思議をなくすものではなく、不思議を生み出すものである」「あるひとつの問題が解明されると、そのさきには、さらに大きな不思議の世界が待ち構えている」という言葉を残しているように、吉本隆明が「文学とはこのように、人間とは何なのか、つぎの謎を造っていって、また新しい謎を造りだしていきます」*2と語っているように、ひとつの問題が解き明かされれば、視野が広がり(あるいは視点が変わり)、次の疑問が見えてくる。
謎をつくりだし、考え続けるのが人間。
むしろ、
人は謎をつくるためにこそ生きているのかもしれないなぁ。