「サンキさんの残したカタチ」


ポストをのぞくと、「サンキさんの残したカタチ」が届いていた。先月末のことだ。

5月に四谷で行なわれた「活版凸凹フェスタ2008」というイベントの片隅で、「サンキさんの残したカタチ」という特別企画展示が行われていた。墨田区にあった町のちいさな活字版印刷所「サンキ印刷」から機材を譲り受け、自らカッパン工房「凹凸舎」をおこしたフォトグラファー大沼ショージさんによるその展示は、使い古した活版の道具たちと、サンキさんこと山崎眞男さんの写真で構成されていた。工場にたたずむサンキさんの姿と、そこに添えられた言葉に胸を打たれ、その写真をまとめた小冊子を制作中と聞いて、すぐさま予約してきたのだった。

封筒のなかにおさめられた、小さな本。ていねいにくるんでいるパラフィン紙の包装をドキドキしながらほどき、1ページ1ページゆっくりとながめた。文字も飾り罫も木版も、なにもかもが愛おしい。

展示会場でも泣きそうになったサンキさんの写真と、彼が壁に残した言葉が刻まれたページ、そこまでたどりついて、胸がきゅーっと締めつけられた。そして、最後のページの「あとがき」からあふれる大沼さんのやさしさに、胸がまたもや締めつけられた。

大沼さんは、長いあいだ連れ添った活版の道具たちとの歴史に決着をつけようと踏ん張っているサンキさんの姿と、用の美あふれる活版道具たちをどうしても放っておくことができず、自らそれを受け入れたんだ。サンキさんはもうこの世にはいない。

いずれ私にも死が訪れますし、活字という物事もいつまで続くか分かりませんが、今ここにあったという事実を残したく、この様なカタチにしました。

活版やモノに注いだサンキさんの愛情、そしてそれを受け入れ、写しとった大沼さんのやさしさがあふれているから、あの展示会場も、この小冊子も、見ているだけでこんなにも泣けてくるんだ、と思った。

良い展示、良い本に出会えてよかったとつくづく思う。
ありがとうございました。

* * * *
検索してみたら、どうやら一昨日から恵文社一乗寺店併設のギャラリーアンフェールにて、『サンキさんの残したカタチ』展を開催しているらしい。

写真家であり、また自らも「凹凸舎」として活版印刷をおこなう大沼ショージさんによる『サンキさんの残したカタチ」』展が、アンフェールの雑貨コーナーにてスタートしました。本展は2008年5月、東京・四谷で行われた「活版フェスタ2008」の特別企画展として開催された展示品のなかから、写真と長年使い込まれた活版印刷に用いる道具の一部を展示しています。

恵文社一乗寺店|スタッフ日記

8月11日まで。興味のあるかたはぜひ。