学ぶとは/生きるとは
ここのところ、あちこちの本を読みながら、どれも読了できずにいるのだけれど。
佐治晴夫さんと松岡正剛さんの対談『二十世紀の忘れものーートワイライトの誘惑』のなかで、こんな一節があった。
佐治●そうですね。たとえば科学は、すべてを割り切ってわからないものをわかるようにすることだと一般的には思われています。しかし、逆に私たち科学者の感覚からすると、割り切れないことを知ることも科学なんです。寺田寅彦も、「物理学とは、世の中にこんなにわからないことがたくさんあることを知るための学問だ」なんて言っていますしね。(略)
佐治晴夫+松岡正剛『二十世紀の忘れものーートワイライトの誘惑』雲母書房,1999.1 P.84
科学に限らず、「なにかを学ぶ」ということは「自分がわからないことは何かを知る」ことであるように感じる。なにか少しでも新たにわかれば、それと同時に新しい「わからないこと」が現れる。けれどもそれを繰り返していくうち、「わからないことすらわからない状態」から、「わからないことの内容が具体的にわかる状態」になっていく。そうして学問は進んでいくんだろうと思う。
そして井上雄彦さんの『バガボンド』を読みながら、こんなことも思う。
「生きるということは、自分のちっぽけさを知ることだ」
幼い子どもは、自分には無限の可能性があると無意識のうちに信じている。年齢を重ねるにつれ、人は限界を知る。けれど、ちっぽけな自分を知ったうえでどうするか。自分はちっぽけだからと諦めるのか、ちっぽけだからこそでっかくなりたいと願うのか。それがきっと分かれ目だ。
ちっぽけな自分を知ることすらできない人もいる。だから、自分のちっぽけさを知って打ちひしがれることはない。自分をちっぽけと知ることこそが、はじめの一歩なのだから。
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