おばあさんの手

ある語り部のおばあさんたちの話を聞きに行ってきた。
懇親会で「また話を聞きに行きたい」とあいさつをしに行ったら、にっこり笑って「どんな話が聞きたいの? なんでも教えてあげるよ。今度、遊びにきてね」と言いながら、わたしの手をぎゅっと握ってくれた。

数えきれない苦労も言葉にできぬほどの辛い体験も全部包み込み、ただただ必死で生き抜いて年齢を重ねてきた人にしかできないような、深みのある笑顔だった。初めて会ったのに、手を握られた瞬間に、なんだか自分が小さな女の子になって抱きしめられたような気持ちになった。

……お年寄りの手に触れると、泣きたくなるのはなぜだろう。

これまで本を読んで知識としては知っていたことが、おばあさんの手に触れたとき、自ら感じた出来事になった。この人たちのことを伝えたいと、今日はっきり思った。

動かなければ、なにも始まらないのだ。