謎を育てるには、自分のなかに他者を作ること。
前記事で「問いを立てる」ことの大切さを痛感したところで、しつこいようだがまたまた先日読んだ丸谷才一の『思考のレッスン』から、「問いの立て方」に関する部分を。
丸谷 考える上でまず大事なのは、問いかけです。つまり、いかに「良い問」を立てるか、ということ。ほら、「良い問は良い答にまさる」という言葉だってあるでしょう。もちろんずいぶん誇張した言い方だけれども、たしかに問の立て方は大事ですね。
では、「良い問」はどうすれば得られるのか? それにはかねがね持っている「不思議だなあ」という気持から出た、かねがね持っている謎が大事なのです。
「よい問」の条件の第一は、それが自分自身の発した謎だという点です。他人が発した謎、でき合いの謎では切実に迫ってこない。仮にでき合いの謎だとしても、自分が痛切に「おや、おかしいぞ。不思議だぞ」と思ったとき、それはよい問になるわけですね。
二番目に大切なのは、謎をいかにうまく育てるかということです。どんな謎でも、最初は「不思議だなあ」といった漠然としたものにすぎない。それを上手に「良い問」に孵化してやることが大切です。ところが、これがなかなかむずかしいんですね。
(中略)
一番大事なのは、謎を自分の心に銘記して、常になぜだろう、どうしてだろうと思い続ける。思い続けて謎を明確化、意識化することです。そのためには、自分のなかに他者を作って、そのもう一人の自分に謎を突きつけて行く必要があります。
(丸谷才一『思考のレッスン』1999,P.187-188)
自分の疑問を他人に話すことはおすすめしない、そんなことを他人に話してもだいたい相手にされない、と丸谷氏は書いているけれど、たとえばブログなどは、書き続けること=思い続けて謎を明確化、意識化することにつながり、問いを育てるのにもってこいのツールと感じる*1。
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*1:どうでもいいけど、いま引用部分を打ち込んでいて、「一番大事なのは、マゾを自分の心に銘記して、」と打ち込みミスをしていたのに気がついた。マゾを銘記してどうする!