『家で病気を治した時代――昭和の家庭看護』

昭和のくらし博物館*1で現在開催中の企画展「家で病気を治した 〜家庭看護の時代〜」*2の内容をまとめた書籍が、今月初めに出版されました。

「昭和戦前期はもっとも家庭看護の発達した時代だった。氷枕、氷嚢、体温計、吸入器、浣腸器は多くの家庭にあった。切り傷にドクダミ、腫れ物にツワブキ……民間療法の知識も豊富だった。ひとたび家族のだれかが病気になれば家族が力を合わせて看病し、病気と闘った。産婆も町医者も按摩も鍼灸師もそれを助けた。家のなかで人の生死に向き合うことでいのちの尊さとそれを守ることの難しさを痛感した時代であった。
医療の充実を願うことは病気を人まかせにすることではない。病気も生も死も自分のこととして立ち向かった時代から学ぶものは何か。」

●百の知恵双書第15巻 
小泉和子編著『家で病気を治した時代――昭和の家庭看護』

目次
●主要内容
第1章 家で病気を治した時代――都市と農村にみる家庭看護 
 都市にみる家庭看護の最盛期 
 農村に多い病気と治療 
第2章 変わりゆくお産のかたち 
 出産――妊娠から産湯まで 
 助産師と消えゆく自宅分娩 
第3章 怖れられた病気――結核と急性伝染病 
 「国民病」と呼ばれた結核 
 猛威をふるった急性伝染病 
第4章 家庭看護と人 
 派出看護婦と保健婦 
 按摩と鍼灸師 
[コラム]家庭看護の七つ道具/配置家庭薬と家庭常備薬/生活の知恵として普及した民間療法/町のお医者さん/駒込病院雑詠/町のハイカラだった医院建築 

百の知恵双書シリーズ_農文協刊行

大学時代の恩師・小泉和子先生のご指導のもと、数人のメンバーで1年間勉強会を重ね、まとめあげた本です。わたしは第3章「怖れられた病気ーー結核と急性伝染病」を丸ごと執筆しました。結核はずいぶん昔の病気のような気がしていましたが、人々に怖れられたのはそう昔の話ではないということ、しかも決して過去の病気ではないのだということを改めて知りました。どの章も図版や写真を豊富に掲載した、見応えのある本に仕上がっています。昭和のくらし博物館でも販売していますし、企画展も秋頃まで開催予定ですので、ぜひ一度足をお運びください。