企画展「家で病気を治した 〜家庭看護の時代〜」

大田区にある昭和のくらし博物館*1で9月8日(土)から始まった企画展「家で病気を治した 〜家庭看護の時代〜」の展示作りに参加しました。来年の8月末まで1年間開催されています。

昭和前期、戦前から戦後の昭和30年(1955)ごろまでは、家庭看護が最も充実した時代でした。よほどの重病でなければ入院しなかったので、ほとんどの病気は家で治していました。頭痛にはおでこに梅干しを張るとか、風邪を引いたら葱を刻んでガーゼに包み首に巻くというような簡単な民間療法がほとんどでしたが、時には注射をするというような高度な看護まで家庭で行なうことがありました。富山の薬屋さんの配置薬や常備薬もさかんに使われていましたし、自分の家でドクダミゲンノショウコを干しておいて煎じて飲んだり、まむしを焼酎漬けにしたりと、普段から病気の時に備えて用意していました。ところが当時は現在ほど便利ではなかったので、一人病人が出れば、家族みんなが看病に当たらなければなりませんでした。

この企画展では「昭和の家庭看護」を大きく

  1. 家庭での治療と看護(都市の看護、農村の看護)
  2. お産(出産、助産婦)
  3. 怖れられた病気(結核、急性伝染病)
  4. 家庭看護と人(派出看護婦、按摩・鍼灸師
  5. 医療器具、配置薬・常備薬

…と分け、それぞれの歴史や背景、看護の実際について、数々のモノや図版、パネルにて解説しています。とりわけ圧巻なのは、ずらりと並んだ配置薬・常備薬の実物展示と、お産に備えて家で用意した品々。いまではあまり見かけなくなった氷嚢や吸入器、湯たんぽなどの医療器具もたくさん展示されています。

なにより、昭和26年(1951)に建てられ、家族が暮らしを営んできた庶民の住宅(=昭和のくらし博物館)で見ていただくことにより、当時の暮らしがリアリティを持って肌に感じられるのではないかと思います。

わたしは「怖れられた病気(結核、急性伝染病)」のパートを担当しました。学生時代に小泉和子館長*2のゼミ生だったとはいえ、昭和の生活史には素人の身。1年間のハードな勉強会になんとかついていって、手作り感あふれるものながら、展示を作り上げることができ大感激でした。

博物館はそのほか、常設展示の子ども部屋、居間(ちゃぶ台のうえに懐かしい食事が並んでいます)、台所など、小さいながらも隅々まで楽しめる空間です。興味のある方はぜひお運びください。展示をゆっくりと見ていただいた後は、ぜひ茶の間にてのんびりおくつろぎください。博物館の庭に生えたドクダミで作ったドクダミ茶でおもてなしします。

25日にはわたしも在館している予定です。

なお、この企画展は書籍化の準備を同時に進めています。お知らせできる段階になりましたら、こちらにも情報を載せたいと思っています。

昭和のくらし博物館の関連書籍
昭和のくらし博物館 (らんぷの本) ちゃぶ台の昭和 (らんぷの本) 昭和すぐれもの図鑑 (らんぷの本) 昭和のキモノ 和服が普段着だったころ (らんぷの本)
洋裁の時代―日本人の衣服革命 (百の知恵双書)

*1:http://www.digitalium.co.jp/showa/

*2:小泉先生プロフィール。わたしはここの出身ではありませんが。http://www.kyoto-wu.ac.jp/daigaku/kenkyu/staff/koizumi.html