『文字本』

文字本

文字本

近年、ひとつの書体が、静かな人気を呼んでいます。
「丸明オールド」という文字です。


はじめは、新聞広告でした。 副田高行さんがアートディレクションした、 サントリーモルツの広告。 それを見て「この書体は何だ!」と衝撃を受けた 広告制作会社ライトパブリシテイの細谷巌さんがやがて自分の作品に使い始めました。 そうして、この書体に魅せられた人がじわり、じわりと使い始め、いまではさまざまなところで見かけるようになりました。


この書体をつくったのは、片岡朗さんという、まもなく60歳のグラフィックデザイナーさんです。
たった一人で、3年の月日をかけて、約8000の文字をひとつひとつ、コツコツと作り上げました。
そんな片岡さんの本が、このたび出版されました。
文字本
40年間、文字とじっくりつきあってきた片岡さんが、 文字の持つ力を一人でも多くの人に知ってもらいたいという思いを込めて書いた本です。


文字にまつわるさまざまな思い、書体設計という仕事についてのあれこれ、組版のこと、そして仕事論まで。もちろん、丸明オールドの制作裏話や、片岡さんがつくった書体の見本もたっぷり載っています。


また、
秋山晶さん(コピーライター)、
細谷巌さん(アートディレクター)、
副田高行さん(アートディレクター)
岡澤慶秀さん(字游工房・タイプフェイスデザイナー)
府川充男さん(築地電子活版代表.書体史・印刷史研究家)
の5人が、「話」として、文字にまつわる考えや経験の言葉を寄せてくださっています。


文字が好きという方はもちろん、これまで文字のことを深く考えたことがなかった人にも、また「ひとつの仕事をコツコツときわめていく」という生き方に興味がある人たちにも、手に取っていただきたい一冊です。
まっしろな本を書店で見かけましたら、ぜひ、ぱらぱらとめくってみてください。(ちょっと分厚いですが)


*「話」の部分の取材執筆と、『デザインノート』編集長とご一緒に編集を担当させていただきました。